しょっぱいバレンタイン

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スマホアプリのソーシャルゲームは、思いきって退会することにした。 毎月最低でも3,000円は課金アイテムを購入してきた。レアガチャに一度で20,000円投じたこともある。 もったいない気がするが、ここでやめないと一生抜け出せないように思う。 ギルドの掲示板にメンバーへの別れの挨拶を書きこむと、皆淋しがってくれた。 「wakkyさん、淋しくなります。これまでたくさんクエストをご一緒できて嬉しかったです!」 「パパさんだったのですね! 同年代かと思ってました」 「またお暇できたら戻って来てください。待ってます~」 次々に書きこまれる俺宛てのメッセージを読みきれないまま、俺はアプリをアンインストールした。 丁寧に洗った風呂釜に湯を張り、たっぷりと疲れを癒した。家事とはなんて重労働なのだろう。 風呂上がりのビールはぐっと我慢した。素面(しらふ)で妻と話すために。 ベッドの上に正座して、妻に電話をした。 「――こんばんは」 数コールで、他人行儀な妻の声がした。 「こんばんは。……あの」 ごくりと唾を飲み下した。 妻と話すのがこんなに緊張するなんて。
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