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;; エピローグ ::
「お母さん、まだ―?もう疲れた」
甘えた声が呼ぶ。案内のシェルパが、坊主背負ってヤロウ とか言う。
英語で通じ無いはずが、こういうことは通じるらしい。
息子は目を輝かせた。
【 やめてください、自分で登らなきゃ 】
シェルパが目を丸くした、子供でこの山は厳しすぎると。
だから、途中までシェルパがロバに乗せてくれ進んだ。
いよいよロバも通れなくなると、徒歩だ。
アイゼンが雪を踏む。
それだも10月の今は、真冬よりマシだ。
「幸一、お父さんが待ってるから行くの!」
息子は首を傾げた、シングルマザーで父はいない事は知っている。
そんなこともわからない、子供ではないのだ。
風が変わった。
夜道が明るくなる、上昇気流に乗って、それは来た。
「すごーい、あれは何、何?」
「アネハヅル。お父さんが生まれ変わった姿」
私はシャッターを切り続けた。
登り切った、太陽を全身に浴び、はしゃぐ息子。
幸せになるように、そして夫の名から一文字とって、幸一となづけた。
幸一は高い高い、点の様な鶴たちに両手を伸ばす。
風が吹いている。
天から一枚の白い羽が、舞い降り風に乗るそれを思わず息子はキャッチした。
はしゃいだ顔が走り寄ってくる。
「お母さん、きっとあの鳥の羽だよね。お父さんが僕の所に来てくれたのかな」
「きっと、そうね」と頭を撫でた。
私達はシェルパと鳥を見上げた。
アネハヅル、勇気と負けない心をくれた鳥。
ENG。
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