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数々の棺桶の中に夫の名前を見つけた。
簡素な白木の箱を開けると、中には壊れた一眼レフカメラ。
いつも夫が、持ってたものだ。
「息子の物で、間違いないね?」と義父。
わたしはうなづきながら、それを胸に抱いた。
義母は「無理しなくていいから」と実母と左右から、肩を支えてくれた。
涙があふれた。
蓋をしてマヒした感情が一気に涙に代わる。
止まらない、止まらないよ。
体が震え、体が熱い。そして確信した。
子供は産もう。
あの人と私の子だ。
親が何を言っても、たとえ1人になっても子供と生きて行こう。
再婚なんて、考えなかった。
「あの人は私に、何を見せたかったんだろう」
カメラには何も残ってなかった。デジタルが完全にショートしていた。
見せたかった写真もない。
バックアップのUSBも、持ち物と共に燃えてしまっていた。
勿論カメラの中のも、亀裂が入っている。
カメラだけでも残っただけマシかもしれない。
修理代は付いたが、治せないほどではなかった。
そして・・。
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