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:: その2 ::
4年後、私は登山した。
3歳の息子は母に預け、8848mのヒマラヤ山脈を目指した。
あの後、すぐに飛行機が突っ込んだ山に入った。
家族を亡くし、泣き崩れた幾人もの、人々と共に。
まだ山々には壊れた機体の残骸があった。
何かないかと捜す人に混ざり、私も夫の何かを探した。
4年間、捜してもカメラ以外、何もなかった。
今、私の首に、そのカメラがある。
修理したが表に着いた、大きな傷はそのままだ。
ファインダーを向けた。
白く凍った息が、風に流れる。
真夜中から何日も、ビバークを重ね、案内のシェルパと共に登る。
イエローバンドと呼ばれる、南西壁が見えた。
多くの登山家がここを登るのを夢見る、険しい峰だ。
シャッターを切った。
さすがにここは登れない。
6000mのマナスル氷河を、目指した。
シンとした空間、空気まで凍った白の世界。
シェルパは英語で何か言った、たどたどしい英語でお互いに会話する。
【 あれがエベレストの山頂ですよ。】
夫が言った「今じゃなきゃ、ダメ」という、その10月に私は登った。
夜道が明るくなってくる。シェルパが言った。
【 日の出だ! 】
光が山頂から切り裂くように、差し込んでくる。
急激な気温の変化で、雪を抱いた氷河が太陽の熱で、白い濃霧を生み出す。
風が南南西に流れる。
太陽が昇り切り、上昇気流が生まれる。
その中を何かが、飛んでくる。
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