アネハヅル

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 エベレストブルーの青空に白く舞う、数百羽の鳥。 シェルパは現地の言葉で、【< 風の鳥 >】と言った。 200羽はいるだろうか? 羽ばたきもなしで風に乗り、向かい風に向け南を目指す。 時に風に流され、羽ばたきつつも降下し、そしてまた風を(つか)んで風に乗る。  風に浮かぶように見えた。 流されても流されても、必死に南へ向かう。シェルパは言う。  モンゴルからインド北部へ、越冬地へ旅する鶴の事を。 5000kmに及ぶその旅はヒマラヤ山脈を越え、高々度5000~8000mもの 高さを飛ぶ、渡り鳥として知られている。 何故こんな高い山を越え、渡るのか? 流されても流されても、向かい風に向かう。  白と黒のコントラストが青空に映え、白い200羽の群れを作る。 翼に氷河の輝きを受け舞う姿。 向かい風に負けずに、高い山脈を越える。
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