2602人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
口に運んで「これは!」と思った。溶けるような舌触り。バニラムースとチョコムースを一緒に口に運べば、 別々に食べた時とは違う味になる。チョコはビターでバニラは程よい甘み。二つが合わさることで、濃厚なのに後にしつこく残らない、上品な味わいへと変化する。
「めっちゃ上手いやん!」
「すごく美味しい!」
声がはもって、お互いに「あっ!」ってなって、目を合わせたら笑っていた。
「俺、絶対に他のケーキも買いに行くわ。」
「確かに。もっと色々なケーキを食べてみたい。」
チョコレートケーキとかショートケーキも食べてみたくなる。きっとこんなケーキを作れるお店の生クリームは格別な美味しさに違いない。
二人でケーキの味を堪能して、お酒も一緒に飲んだけど、店内に一箇所だけ設置されているソファーのテーブル席で、遠慮がちに手が上がったので、大和くんは行ってしまう。どうやらチェックのようだ。時刻はもうすぐ午前0時になる。この時間はチェックの客が増える。終電の時間が迫っているからだ。私もいつもならもう出る頃だ。ここまでは自宅から電車で20分程。午前0時過ぎが終電になる。
明日も仕事だけど……でも、いいや。今日はなんとなくもう少しここにいよう。街のクリスマスムードが去るまでは。帰りはタクシーに乗ってもいい。
最初のコメントを投稿しよう!