男女関係は突然に始まる

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「一緒に飲まへん?俺の奢り。」 「えっ!?このワイン、高級品じゃん!」 有栖さんはラベルを見て、ダメだよと言いたげに首を激しく横に振る。 「ええねん。なんか今日は俺もめっちゃ楽しかったし。それに、このワインはクリスマス用に仕入れたから。でも、売れ残っちゃって。誰も注文せんのよねえ。カクテルの方がいいって言って。」 「それは、大和くんの作るお酒が美味しいからだよ。」 「ありがとう。そんなん言われたら、明日からも頑張れそうやわ。」 売れ残ったワインのコルクをゆっくりと開けて、有栖さんと自分の分のワイングラスに同じ量を注いだ。 「去年もこの店のオープン記念に同じワインを買ったんやけど、全然客も来なくて売れ残ったんよね。」 「そうなの?去年はそのワインはどうしたの?」 「客が来ないって泣きついたら、足を運んでくれた友達と一緒に飲んだわ。」 中学校からの仲で、仕事終わりに男友達と二人で来てくれたのだ。システムエンジニアの仕事をしていて、その日は土曜日だったけど休日出勤をしていたそうだ。 一緒に連れて来てくれた友達も帰り、二人きりになった店で今日と同じ白ワインを開けた。 彼はワインを飲みながら、ずっと片思いをしている幼馴染みの話をしてくれた。イケメンのくせにいざとなったらヘタレなやつで、俺は何度も「そんなに大切なら告白したらええやろ。」と言ってやった。 俺の後押しも意味があったかは分からんけど、彼はその幼馴染みに告白をして、今は時々二人でこの店に来てくれる。
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