男女関係は突然に始まる

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**** Polarisの入口を開けたのは、午後10時半を過ぎた頃。一組の仲良さげなカップルとすれ違った。イケメン高身長の男と童顔の背の低い女。女は男の腕に手を組んでこの上ないぐらいに幸せそうな顔をしていた。 口から出そうになった溜息を、私こと正木 有栖(マサキ アリス)は慌てて飲み込んだ。 溜息ばかりついていたら、幸せが逃げてしまうよ。 そう教えてくれたのは今は亡き大好きだった祖母だ。だから、社会人になって溜息をつきたい場面に遭遇しても、なるべく控えるようにしてきたのだ。それでも、今日ばかりは溜息の一つもつきたくなる。 12月24日。クリスマスイブ。イルミネーションに彩られて浮かれた街並みに、はしゃいでしまいたくなる一日。でも、所詮はカップルのイベントなのだ。独り身の私は決してはしゃぐことなどない。ましてや、今日は一日仕事だった。 いくつになってもオシャレ女子をコンセプトにOL向けの服を販売している店でアパレル店員をしている。20歳の時に服飾の専門学校を卒業して、今の会社に就職した。それから8年。今となっては、店の副店長にまでなり、アルバイトや派遣社員の人たちの面倒をみる役も担っている。
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