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ネイビーのシーツが引かれた少し大きめのベッド。大人二人がなんとか並べるサイズではある。
同じ匂い。大和くんの胸に顔を埋めて思う。そりゃ彼の家で彼の使っているシャンプー、トリートメント、ボディーソープを拝借したのだから、当たり前なんだけど。
「ねぇ……」
私を抱きしめる大和くんから声がする。お互いに色違いのスウェットを着ていた。これもお借りしたものだ。
「なんで今日、星の話なんて聞きたがったん?」
なんで……唐突に思い付いた訳ではない。
初めてPolarisを訪ねたのは梅雨明け前だった。壁一面に広がる星空に惹かれたのを今でも覚えている。それから季節が巡って秋になって、あれ?と思ったのだ。星の位置が変わっていると。もしかして、季節ごとに変えているのではないだろうかと推測したが、お客さんの相手に忙しそうな大和くんに尋ねることはできなかった。
推測の答え合わせをすることもなく冬になって、推測は確信に変わった。やはり季節に合わせてこの壁の星も動いているのだと。そして、大和くんに聞いてみたくなった。春夏秋冬でどんな星が見えるのか。
「そういう理由です。」
「そんなに気になってたんやったら、もっと早くに聞いてくれたら良かったのに。」
「大和くんの仕事の邪魔をしたくなかったから。」
「……そう言うのはズルイ。」
えっ?今度は私がズルイ?どのへんが?
問い詰めたかったけど、もう声はでなかった。
大和くんの唇が重なったから。あぁ……もう後戻りできないし、するつもりもない。口の中に入り込む舌に自分の舌を絡めていた。
男の人とキスするのも3年ぶりだろうか。でも、そんなことどうでもいいや。今日のケーキみたいにずっと堪能していたくなるようなキスに、理性は持っていかれていた。
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