一夜明けると残るのは後悔

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**** 朝、目をさましたら、大和くんはベッドにはいなくて、部屋には香ばしいコーヒーの匂いがした。 「起きたん?」 ベッドから体を起こして、キッチンの方を見やると、朝ご飯を作っている大和くんがいる。見間違えたと思って、洋服の袖で瞼をこする。自分が着ているのはサイズの少し大きい大和くんのスゥエットだ。 「どないしたん?驚いた顔して。もしかして昨日の記憶がないとか?」 「あ、あるよ。覚えてる。」 キスしたことも抱かれたことも。驚いたのは大和くんの家にいたからじゃない。今までの人生で自分より先に起きて、朝ご飯の支度をしてくれる男に出会ったことがないからだ。 「着替えておいで。仕事、間に合う?」 時計の針を見ると10時になったところだった。ここからなら30分もあれば仕事場に行ける。 「間に合う。」 もそもそとベッドからフローリングに出て、ベッドカバーは丁寧に直しておいた。一夜だけの関係だ。自分の存在を残すことはしない。 「有栖さん、ちょっとおいで。」 「うん?」 ひやっとしたフローリングの感触を少しでも回避したくて、爪先で歩きながら大和くんの傍に近寄った。 キッチンではコンソメのスープとアボカドのサラダができあがっている。トースターではパンが焼かれている。 「味見。」 小皿にコンソメスープをすくって、私の口元に持ってきてくれる。 「……美味しい。」 昨夜、若干飲みすぎたであろう胃をいたわってくれるような味だ。濃すぎず薄すぎないコンソメの味と、中に入ったにんじんや玉ねぎ、ベーコンが程よい柔らかさになっている。 「良かったわ。あ、足寒いん?有栖さん、寒がりやもんな。」 IHコンロの火を消してから、大和くんが玄関からスリッパを持ってきてフローリングに置いてくれた。 「これ履いて。」 「……。」 履く前に大和くんの二の腕の辺りをぐーで殴った。腹が立っていた。なんなんだ!この男は!!
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