一夜明けると残るのは後悔

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朝ご飯を食べて、全ての支度を完璧に整えた有栖さんに玄関先で別れを告げた。扉ががちゃんと音を立てて閉まるのを見たら、自然と溜息が漏れた。 やらかした。 それが本音。セックスをするつもりなんてなかった。最初は。せやけど、傷の手当てをしている時に、キャーキャー騒ぐ有栖さんを可愛いと思ってしまったのだ。「これからどうする?」って聞いた時も、「帰る。」って言うてくれたら、俺は引き止めずにタクシーも呼んで、家に送り帰すつもりだった。 「大和くんはどうしたいの?」はズルイ。そんなん言われたら俺も男だ。このまま一緒に朝を迎えてもいいかって思いが勝った。 それでも朝を迎えたら残ったのは後悔だけだった。大切なお客さんをセフレになんてしたくない。でも、好きだから抱いたとは言えない。自分の心を隅から隅まで探ってみても、今は彼女に恋愛の感情はない。 可愛いとは思っている。有栖さんがお店に来てくれたら、正直、ちょっとテンションも上がる。幼馴染みと付き合った友達を見て、人を好きになるのもええなあって思ったりもしている。でも、以前から知り合いの相手を「実は好きだったんだよ!」と思い込ませられる程、もう青くもない。
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