一夜明けると残るのは後悔

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次に店に来てくれた時は、自然体で振るまおう。 ドラム式の洗濯機に溜まった洗濯物を放り込みながら決心していた。洗濯物の中に一枚だけいつもはあるはずもない、女性物の花柄のハンカチがある。有栖さんの膝に巻いていたものだ。外した後、手洗いをして彼女に返すことなく手元に置いておいた。 返しても良かったのかもしれないけど、大袈裟かもしれないけど、人質的な感じだった。昨夜のことを悔いて、有栖さんはもしかしたら店に来ないかもしれないという思いもあった。自分だって次に会う時に、どんな顔をして会ったらいいのかまだ思案している。 起きてから昨夜のセックスについてお互いに一切触れなかった。俺が昨日の記憶があるのか尋ねたら、あるとは答えたが、それ以上踏み込むことはなかった。 彼女も後悔している。 この仕事について、相手の微妙な表情で気持ちを汲み取ることが得意になってきていた。 このまま会えんくなるかもしれない。それはこっちも心残りがある。もし、Polarisに来なくても、有栖さんの働いている店の名前と場所は知っている。もちろん今まで一度も行ったことはないけど。最悪の場合、ハンカチを持っていって昨夜のことを詫びようと思っていた。
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