一夜明けると残るのは後悔

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**** 勤務するアパレルショップが入っているのは、駅前に位置するデパートの中で、土日は客で混雑する日もあるが、平日はそれほどでもなかった。夕方頃は仕事帰りの女の人が立ち寄ることも多々あったが、昼間は客も少ないため、バックヤードの整理や商品の発注などの事務的な作業を行うことも多かった。 始業の40分前には、従業員の控え室に到着し、泥棒のようにあたりの様子を伺いながら中に入った。従業員の控え室には、各々のロッカーが壁一面に整列していて、そこに着替えや貴重品を入れるようになっていた。中央にはソファーと楕円形のカフェテーブルが置かれていて、そこでお昼ご飯や晩ご飯を食べることも可能だった。 誰もいなくて良かった。 もしここで他の従業員と鉢合わせでもしたら、問い詰められるにも決まっている。「あれー?昨日と同じ服じゃないですかー?何があったんですかー?」とか言って。 昨日のことは後悔している。思い出すだけでも、あの時の私は飲み過ぎていてどうかしていたのだと言いたくなる。まさか行きつけの店のバーテンダーと!なんて考えたこともなかった。 大和くんはいい人だ。優しいし話していると楽しいしほっこりとした気持ちにもなる。だからセックスすることを拒む気持ちは微塵もなかったのだ。しかもキスの仕方とか触り方とか、まるで私のことを知っているみたいに、気持ちいいところに触れてくれた。 触れてくれたけど、それだけで好きになるなんてない。昔、男は体だけって割り切れるけど、女は情が入りやすいから、簡単に体だけって割り切れることなんてないと聞いたことがあった。 それも分かる。胸のあたりに大和くんの存在が残って、昨日のことをなかったことにしたいのに、ふとした瞬間に彼の微笑む姿を思い返してしまう。
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