一夜明けると残るのは後悔

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まあ、それだけが原因じゃないけど。 「可愛げがないよね。」って無神経な男に、合コンの帰り道に言われたことがある。美人だけど、気が強い感じが全面に出ているし、男としてはもう少し守ってあげたくなる女の子の方がいいなって。 そう言われてメソメソと泣くような女でもなかった。持っていたハンドバックをそいつのみぞおち辺りにぶつけてやった。苦しんでいるそいつを無視して、駅まで走り家に帰ったら、夜更けに店長から[やりすぎ!]ってメッセージが来たのは言うまでもない。 「私、先に行きますよー。正木さん、ちゃんと着替えてからお店に入ってくださいよ。」 年は4つも下なのだが、内海さんは物怖じしない。背中まで伸びたふわふわの内巻きの髪を、手際よくひとつにまとめて、バレッタを留めると、「今日も私は可愛い。」と言いたげに、入り口の傍に置かれた全面鏡に笑いかけてみせた。 言われなくても着替えますとも。あなたが出ていったらね。だって、まさか下着まで着替えるところを見せるわけにもいかないし。 「あー、でも正木さんにも彼氏かぁ。どんな男か見てみたいなぁ。」 彼氏じゃないし。だけど、そんなことを言ったら、またあることないこと付け加えて噂話されるから、彼女の想像に任せておこう。そのうち忘れるだろうし。
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