一夜明けると残るのは後悔

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「井筒さん!」 バックヤードから店舗に繋がる扉を開けて、彼女の名前を呼ぶ。店長が休みの今日は、副店長である自分が店を仕切らなくてはならない。 井筒さんは私の声のトーンが明らかに苛立っているのを感じたのだろう。カットソーを畳んでいた手を止めて肩をすくめた。 「ちょっと来て。」 そう言っただけで、今にも泣き出しそうな顔になる。長い睫毛をはたはたと揺らして、鼻をすすってなんとか涙を堪えている。まだ何も言ってないんだけどと言いたくなる。 井筒さんがバックヤードに入ると、不良品がないかの点検を終えた内海さんが「頑張って。」と言いたげに肩を叩いて出ていった。二人は仲がいい。多分、裏で私のことを「あの小言女!」とか「だからいつまでたっても結婚できないのよ!」とか言っている。 「井筒さん、これホワイトなんだけど。」 「……。」 「紺色とベージュの発注を店長に頼まれていたよね?」 「……。」 あー!もう!「はい」か「いいえ」ぐらいは言ってくれ!爆発して叫び出しそうになった瞬間、彼女の目からポタリと涙が落ちた。 「ごめんなさい。私、紺色を発注したつもりだったんです。」 一度泣いたら止められないようで、ぐずぐずと泣きじゃくる。もう学生じゃないのだから勘弁して欲しい。 「送信ボタンを押す前に確認した?」 「いえ……。」 「私、春からずっと言っているよね。送信ボタンを押す前に確認してねって。そう言うことって、学生時代にバイト先でも習わなかった?まず確認してから行うって。」 「うっ…うえっ……。」 正論で攻めたら彼女は言い返せなくなる。こっちは言い負かしたいわけじゃない。とにかく仕事のミスを減らして欲しいのだ。その方が今後の彼女のためになるのも事実だし。
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