一夜明けると残るのは後悔

12/20
前へ
/279ページ
次へ
泣かないでよと言いたいけど、さすがにそれは不味いかと思った。どうみても古株の私が新入社員を虐めているとしか思えない。 「正木ちゃーん、またやってるの?」 バックヤードのドアが開いて顔を覗かせたのは、ここの派遣社員の木村恵麻(キムラ エマ)で、私よりも4歳年上でよその店舗で昔は社員だった。結婚して会社を辞めて、子供を産み、今は子供を保育園に預けて派遣社員として職場復帰したのだ。子供を一人産んでいるとは思えない八頭身美人で、耳が出るぐらいのベリーショートが小顔の彼女にはピッタリだった。街を歩いていたら、週に一度は読者モデルにならないかと声をかけられるらしい。 「日和ちゃん、泣いてるじゃん?あんまり責めたらダメだよ。」 正直言うと、彼女のことが少し苦手だ。元社員で年上ってこともあって、こっちも木村さんには強く言えないところもある。内海さんも井筒さんも恵麻姉さんと言って慕っているし。井筒さんがミスをしたり、内海さんが自分勝手にシフトを組んだりすることに、店長に頼まれて注意したら、いつも彼女が出てきて、「まあまあ。」と言って私をなだめてくる。 それなのに、井筒さんや内海さんがいないところでは、「正木ちゃん、いつもみんなをまとめてくれてありがとうね。」なんて言って、調子が良いとしか言えない。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2617人が本棚に入れています
本棚に追加