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薄暗い店内にプラネタリウムが映し出されている。1周年を迎えたバー Polarisには常連客もいれば、このオシャレな雰囲気に惹かれてやって来た恋人同士もいた。
私がこの店を知ったのは半年前。雑居ビルの3階に位置するPolarisの下の階のヘアーサロンに通っていたのだ。そこで、いつも担当してくれている美容師さんに教えてもらった。「上の階のバー、おすすめだよ。」って。一人でも入りやすいし、バーテンダーも面白い人だしと。
「有栖さん、お疲れ様。」
私の顔を見て笑顔で出迎えてくれたバーテンダーの真ん前のカウンター席に腰を下ろした。
「今日はお客さん、一杯だね。」
バーテンダーから渡されたお手拭きで爪の先まで丁寧に拭いた。
「クリスマスやからちゃうかな?1周年記念のお祝いに来てくれはった人もいたけど。」
「今日、休みかと思った。」
今年のクリスマスは日曜日だった。Polarisは日曜日と月曜日は店を閉めているのだ。
「1周年でクリスマスじゃなかったら閉めとったけど、さすがに今日は開けないとあかんかなと思って。」
関西弁を喋るこのバーテンダー、芦野 大和(アシノ ヤマト )は私よりも3歳も若いくせに、この店の経営者でもある。親戚が不動産屋で雑居ビルのこのフロアを安くして貸してもらえたからと言っていた。
「有栖さんは一人なん?」
「一人。悪い?」
「全然。だって今日も仕事やったんやろ?休みたかったけど、他の社員に頼み込まれて仕事を引き受けたって感じやろ?」
「そう!そうなの!だってね、店長がね……。」
私が文句を垂れても大和くんはいつも笑いながら聞いてくれる。
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