一夜明けると残るのは後悔

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**** 「せっかく俺が来てやったのに、なんでそんなガックリした顔をするわけ?」 12月26日。今日が今年最後のPolarisがオープンしている日だった。22時前に店のドアが開いて姿を見せたのは、中学の時の友達、秋吉 伊都(アキヨシ イト)だ。長身イケメンで、絵になるような男だった。中学の時からそりゃモテまくりで、色んな女が彼のことを狙っていたけど、結局落ち着いたのは、彼が昔から一番大切にしている幼馴染みの隣だった。 「ガックリした顔なんてしてないよ。」 伊都がカウンター席に座ったので、俺はお手拭きを渡してコースターを置いた。 「誰か待ってるの?」 誰か待ってる?俺が?誰を? 「ビールでええんか?」 「うん。ありがとう。」 ビールサーバーから背の高いグラスにビールを注いで、彼のコースターの上にそっと置いた。 「今日、宮坂はどないしたん?」 宮坂寧々(ミヤサカ ネネ)というのが、伊都の幼馴染み兼彼女の名前で、俺とは中学校の同級生である。背の低い童顔で守ってあげたくなるような彼女は、とにかく伊都のことが大好きで、本人は無意識だがいつも目で伊都のことを追っていた。 「寧々は会社の忘年会。遅くなるって。」 「そっか。そんな季節やもんなあ。」 店のドアが開く音がしたので、俺は「いらっしゃいませ。」と声をかける。中に入ってきたのは、女の人の二人組で初めて見る新規のお客さんだった。年末に入り、忘年会帰りに仲間内で飲みなおす感じで店に来てくれる客が増えていた。
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