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今日、彼女が来なかったら会いに行こう。いつまでも待ってるなんてらしくない。
「伊都のおかげやわ。」
「何が?」
「俺らしくなかったってこと。来て欲しいって思うことは、会いたいんやろうし、それなら会いに行くわ。」
会って何を話すかも頭の中でぐるぐると考えていたけど、そんなのも全部アホらしくなっていた。有栖さんの姿を見た瞬間に浮かんできた言葉が、一番言いたい言葉なんだと思うし。
「きっと素敵な人なんだろうね。」
「えっ?」
「いや、一人言。チェック頼んでいい?寧々が忘年会が終わったって。」
「分かった。今日は来てくれてありがとう。」
伊都は相変わらず宮坂にぞっこんだ。多分これから駅まで迎えに行ってあげるのだろう。そう言うところは、昔から変わらない。中学の時も宮坂が帰り道に一人にならないようにって、通学路の途中で待っていてあげていることがあった。
そして、俺はそういう伊都が少し羨ましく思ったりもする。父親が蒸発したせいか、真剣に恋愛することはどこか避けながら大人になった。それなりに付き合ったし、することはした。でもそれ以上にはなれなかった。人の感情に絶対なんてないと思うから。
それでも年齢を重ねるにつれて、絶対を求められるようになった。これを最後の恋にしたいとか、恋愛の先を見据えて付き合いたいとか言われると正直萎える。自分の店を持って仕事をしているけど、一番自分が10年後、20年後の自分を想像ができないから。Polarisは大切にしているけど、いつまで続けるつもりなのか、続けられるのかは自分でも不透明なのだ。
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