男女関係は突然に始まる

5/27

2604人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
緑と赤が二層になったクリスマスカラーのカクテルを大和くんに入れてもらった。混ざり合ったところは神秘的だけど、どこか儚い感じもした。たった一日のイベントごときに盛り上がる世間を嘲笑っているようにも見えた。 胸の辺りまである栗色のストレートヘアを耳にかけてカクテルに口をつけた。耳には大ぶりの星のピアス、爪はスカイブルーに塗られ、上からラメでコーティングしている。最後に付き合った男はこのネイルが嫌だと言った。「この手でご飯を作っているのかと思うと……。」と言われた。 職業柄、ネイルを落とすわけにはいかなかった。客が服を購入するかは、店員の話術もあるだろうけど、まず私たちがいかにその服を着こなせているかという点にもかかっている。長身の両親から生まれたため、身長には恵まれて163センチ程あった。お酒は好きだけど、年齢とともに食への関心は下がり、食は細くなり体重も減って、今は客から「スタイルがいいですねー。」と褒められるぐらい、細身のパンツスーツが似合う女になった。 褒められることは嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだった。客の購買意欲を高めることは出来たけど、プライベートではそれほど役には立たなかった。顔も目鼻立ちがはっきりしていて、黙っていたら美人だとは言われるけど、出来る女に見えて、男の人からは距離をとられた。元々性格も甘え下手な方だ。異性にも同性にもどうやって頼ったらいいのか分からない。しかも最近は仕事仕事で、ますます顔つきが凛々しくなったように思う。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2604人が本棚に入れています
本棚に追加