男女関係は突然に始まる

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それでもこの店に来たら重たい鎧を脱げた。大和くんが聞き上手だからかもしれない。外で愚痴をこぼすことなどほとんどないのだが、彼の前ではお酒の効果もあってほんの少しだけ私は素直だった。 素直になれるのは、大和くんはが3歳年下というのも理由かもしれなかった。妹と同い年なのだ。だから、この世代の子の考え方とか見てきたものとかが何となく分かるので、自然と話しやすかった。 カクテルを半分ほど口にして、ぼんやりと大和くんの姿を眺めた。アメリカンコーヒーのような髪色で、顎の辺りまでの長さの髪にパーマをあてて、いつも後ろで一つに束ねている。髪の色と同じ色素の薄い瞳は大きいが、唇は薄く左右対称。イケメンかどうかの判断は私にはできないけど、整った顔をしていると思う。 でも彼は所詮、バーテンダー。初めて会った時は、一瞬ときめいたりもしたけど、今はそんな気持ちはない。だって、彼は客にお酒を入れて話しを聞くのが仕事だから。今も先程来店した常連客と思われる女性二人組と談笑している。 客商売にとって話すことは命なのだ。しつこくない程度に、でも相手がまた来たいと思ってもらえるように関わることが大切なのだ。
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