男女関係は突然に始まる

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星座が描かれたコースターに淡い水色のカクテルが置かれた。そしてその横に円柱の白いムースケーキも置かれた。ムースケーキの上にはフランボワーズがちょこんと乗っている。 「これ……。」 「クリスマスにはケーキやろ?有栖さんにあげる。」 「……。」 甘い匂いが鼻をくすぐって、すぐにフォークを入れたくなった。でも……今日はクリスマスだから。それは私だけじゃない。 「一緒に食べよう。半分個。お酒も付き合ってよ。」 一人で食べても美味しくない。働き出して一人暮らしを始めてもう8年。一人のご飯には慣れたけど、時折思う。朝も昼も夜も一人のご飯って味気ないなって。 「じゃあいただきます。」 大和くんは断らない。私が客だから。客がお願いしたことは、余程のことでない限り断ることはしない。彼は自分の背後にあるガラス扉の付いた白い木枠の食器棚から綺麗に磨かれたカクテルグラスを一つ出して、私と同じ色のカクテルを注いだ。 バーテンダーの彼は普段はお酒は飲まない。客が「奢るから一緒に飲んで。」と誘う時だけ口にする。だから私は、彼がどれぐらいお酒に強いのか、どんな種類のお酒が好きなのか、そう言ったことを一切知らない。
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