チョコレートパニック

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「でも、ちゃんと振ってくれたおかげで、舘川さんへの気持ちは完全に決着がつきました。これで新しい恋に踏み出せます」 「……吉岡さん、あなた偉いね。見直しちゃった。私も頑張らないと」  静香は、ラーメンの汁を飲み干して言った。 「もしかして、先輩も好きな人いるんですか?」 「……うん、いるよ」  静香は呟くように言った。  よく行く馴染みの店のバーテンダー。寡黙にカクテルを作る彼に突然チョコを渡したらどう思うだろうか? 話していて気が合うのは何となく分かっていたのだけど、バーテンダーと客という関係を越えることはできなかった。 バレンタインにチョコを渡すなんて、そんなダサいことできないと思っていたけど、それも悪くないかもしれない。今日の吉岡を見てそう思えた。それに、何て言ったって今日のてんびん座はナンバーワンの運勢なのだ 「じゃあ、私はこれからジムに体験入学してきます。そして、ジムで格好いい筋肉ムキムキの男の人をゲットしてやります」  ラーメン屋を出てそう言った吉岡の顔は輝いていた。 静香は吉岡と別れると、弾んだ足取りでチョコレートを売る店に向かった。静香のバレンタインはこれからだ。
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