チョコレートパニック

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「入社したばかりでミスばかりしちゃって、この仕事向いてないんじゃないかって悩んでた頃、舘川さんにはよく相談に乗ってもらってたんです」  吉岡は500円の煮干しラーメンを啜りながら言う。店内は満席だった。 「このラーメン屋教えてくれたのも舘川さんなんです。毎月14日は煮干しラーメンが100円引きになるんですけど、2月14日は煮干しの日でさらに安くなって500円になるんだって」  優しくて頼りになる職場の先輩である舘川を好きになるのに時間はかからなかった。 「舘川さんに長く付き合っている恋人がいて、その人と結婚間近だってことはもちろん知ってました。でも、私は私のこの思いをどうしても封じ込めておくことはできなくて。どうにもならないことが分かっていても、伝えたかったんです。だから、今日手紙を添えたチョコを持ってきました。でも、渡せるとは思わなかった」 「え、そうなの?」  静香は箸を止めて聞いた。 「だって、バレンタインにチョコで告白なんて、そんなの学生みたいじゃないですか。うちの会社義理チョコ禁止だから義理チョコに見せかけることもできないし。だから、田島先輩には感謝してるんです。あんな風にプレッシャーかけてくれなかったら、チョコを渡す勇気なんてきっと出なかった。ま、結果、振られちゃったんですけどね」  吉岡はさっぱりとした口調で言う。
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