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吉岡里沙が今年度の新入社員として総務部に配属された時、教育係を任されたのが静香だった。吉岡を最初に見た時に抱いた印象は、何か嫌、だった。それまで総務部で一番若いのが静香と、同期入社の田島冴子で、田島は仕事こそできるものの可愛げのあるタイプではなかったので、静香が部署内で一番の妹キャラ、愛されキャラだった。
吉岡の顔をひと目見た途端、そうした自分の部署内での立ち位置が崩れ去るのを感じた。
吉岡は童顔というか赤ちゃん顔で、目がキラキラと輝いていた。そんな幼い顔をしているくせに胸が大きく、女性である静香も話している時に視線を奪われてしまう程だった。
男性社員からの受けも当然よく、配属されて一ヶ月経った頃には里沙ちゃん里沙ちゃんと親しみをもって皆から呼ばれるようになっていた。
静香のことを静香ちゃんと呼んでいた男性社員は、いつのまにか静香さんと呼ぶようになっていた。
吉岡は仕事に関しては真面目に取り組む姿勢を見せていたものの、少し抜けている所があり、よくミスをしたり、見当外れなことをして時間を無駄にした。
年上の男性社員はそうした吉岡のミスを笑い飛ばして可愛がったが、吉岡の指導係を任されている静香からするとストレスが溜まる一方で、徐々に吉岡に当たる態度が強くなっていった。男性社員はそんな時吉岡のことを庇ったりして、静香は部署内での立ち位置が完全に変わってしまったことを自覚せざるを得なかった。
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