2人が本棚に入れています
本棚に追加
もし吉岡が義理チョコを配り出したら男性社員はどうするだろう? 義理チョコは禁止だからとちゃんと拒絶してくれるだろうか。せっかくだからと受け取ってしまう社員もいるのではないか。そうすると社内ルールを守った静香たちが気の利かない女扱いで、吉岡の株だけがあがってしまいやしないか。
そんなことを考えていると静香は仕事に集中できなくなってしまった。
いつもはしないミスをして、上司に注意され、平謝りすることに。何が今日のてんびん座の運勢は一番だ。やっぱり朝の占いランキングなんて当てにならない。そう思いながら、吉岡のことは忘れて仕事に集中しようと気合いを入れていると、温かいお茶の入った湯呑みがデスクに置かれた。
「倉橋先輩、ドンマイ!」
見上げると、吉岡がいつもの笑顔で立っていた。何も知らない無邪気な子供のような笑顔。
その瞬間、静香の中で何かがぶちんと切れた。
「吉岡さん、ちょっと、いい?」
静香が勢いよく立ち上がると、椅子が嫌な音を立てて回った。
最初のコメントを投稿しよう!