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「お茶、ありがとう」
一応礼儀として言ってから、湯呑みのお茶で喉を潤した。
「いえいえ」
吉岡はそう言ったものの、何か怒られるのではないか、ちょっとだけ緊張した面持ちだ。
静香の働く会社では従業員がリラックスできるようにと緑の多いテラス的な空間があって、静香はそこに吉岡を連れ出していた。吉岡が新入社員として入社したての頃は、よくそこで指導をしたものだ。
「今日はいい天気ですねぇ」
空気を和ませようとしてか、吉岡がわざと惚けた調子で言う。実際今日はいい天気で、朝のニュースではお天気キャスターが三月中旬並みと言っていた。
「吉岡さん、今日が何の日か分かってる?」
「今日?」
吉岡がわざとらしく首を傾げる。その芝居がかった仕草に静香のイライラが募った。
「そういう小芝居はいいから」
「今日は2月14日、煮干しの日です」
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