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同じ中学で同じクラス。どうせ一緒に帰るのに、わざわざ放課後に体育館裏へ呼び出されたバレンタインデー。チョコレートを貰えるもんだと思ったら、渡されたのはミサンガだった。しかもそれは君がつけていたミサンガ。
君の瞳は青色。髪の毛は金色。日本語はたどたどしい片言。名前はアリス。
アリスが日本に来たのは1年前。日本について知らないことだらけってこともあるのだけれど、それを差し引いても驚かされることばかりだった。
俺は受け取ったミサンガを指でつまんで、アリスの目の前で、ぶらぶら揺らした。
「日本のバレンタインデーはチョコを贈るんだよ」
揺れるミサンガを追って、青い瞳を揺らすアリス。人差し指をまっすぐ立てて、唇に押し当てた。小さな子供みたいなその仕草は、アリスが日本語を頭の中で変換している証拠。
「チコ?」
「チョコ。チョコレート」
「chocolate?」
「チョコレート」
納得した君は空に向かって繰り返す。
「chocolate。チョコ。チョコレート」
俺もアリスに続いて繰り返す。
「chocolate。チョコ。チョコレート」
嬉しそうに首を振ったアリスが今度は先生役だ。
「chocolate」
「チョコレート?」
「chocolate」
「chocolate?」
「good」
ひとつ教わったら、ひとつ教える。そんな教え合いっこがふたりの会話。
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