最後の一つ

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 俺は自他共に認めるモテ男。いわゆる、イケメンだ。もちろん今日のバレンタインデーは、チョコチョコチョコ、そう、俺に向かってチョコの嵐が吹き荒れたのだった。同僚、取引先のOL、そして行きつけのコンビニのお姉さんまで。みんな俺を本命とばかり、綺麗な包装紙に可愛いリボンつけた、箱入りの値が張るもので勝負してきた。  実はこの俺、あまり大っぴらにはしていないが、大の甘党なのである。本心ではチョコの嵐は大歓迎。さてどれどれ、片っ端から箱を開けて、食べていくことにするか。今日の晩飯はズバリ、チョコだ・・・。  さて、すっかり大満足。ありったけのモノ、ゆうに10箱以上は平らげたであろうか。おっと、まだここに一つ残っている。これは確か、部の中でも一番目立たない、吉田がくれたヤツじゃないか。くれた人間も地味なら、箱も同様、何でこんなに地味なんだろう。ああ、おかげで最後まで目につかず残っちまったぜ。どうもさえないバレンタインデーときたもんだ、こともあろうに、フィナーレが吉田のなんて・・・。  ん?、ちょっと待て、これ、変に箱が細長い上、重さも無い、軽い。はて、チョコかと思ったら・・・  あ、チョコじゃない、歯ブラシだ。おまけに手紙まで添えてある、 「甘いものをたくさん食べた後は、虫歯にならない様、歯を磨いてから寝て下さい。その綺麗な歯並び、いつまでも大切に・・・」  勝者、吉田!!
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