序章 1

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序章 1

先の大戦から400年余り。 憎しみ合った国と国とが争いを起こし、その火種は地球全土を覆った。 核兵器の代わりに使われた細菌兵器・ウイルス兵器の応酬により人類の約99.9%を死に至らしめた。 ワクチンを用いた人類は0.1%を生きながらえることに成功したが、人類以外の哺乳類、鳥類は全滅し、爬虫類と魚類の一部が細々と生きている。 地球の歴史上、幾度とない大絶滅が起こり、其の度に限られた種が繁栄し、食物連鎖の頂点に立った。6500万年前の小惑星の衝突により、繁栄していた恐竜類は絶滅に至り、小さな哺乳類が生き残り、その後天敵のいなくなった世界で繁栄を極めることとなる。 しかし今回の大絶滅後の世界で繁栄を極めたのは虫であった。 羽を広げると1mに及ぶ大きさになる蜻蛉(トンボ)、体長2mに及ぶ百足、脚先から脚先まで1メートルあまりの蜘蛛。 小爬虫類、両生類、草食昆虫を大きな肉食昆虫が食らう、そのような連鎖の傍らで、人類は細々と生きながらえていた。 タウン・イ―サは広い盆地の中にあった。 川幅200m以上はあるセデ川が大きな蛇行を描き平地をゆったりと流れ、その川面が青い空を映していた。     
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