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序章 4
数分ほど過ぎた頃、弱まる雨音にかすかにゴウンゴウンと機械音が交じって聞こえた。
ヒサシは腕に巻き付いたユリの手をほどくと、頭の上のキイをユリの頭に乗せ、橋桁から抜け出てコロニーの方を見た。
橋の残骸からコロニーまでの距離はおよそ400メートル。
双眼鏡で覗くと、走って来た全長15メートルはあろう白いカーゴ(貨物車)がコロニーのゲート前にとまった。
「シティからの物資運搬車だろうか」
ヒサシの思考が止まった。物資運搬車は三日後に来る予定だ。ミートキューブが三日先まで来ないから、ユリとこうして釣りをしているのだ。シティが予定を変更する場合、少なくとも10日前には連絡が来る。
コロニーのゲートから男が一人出て、カーゴの運転手に対応している。
マコト先輩だ。
おかしい。何か違和感がある。
ヒサシはマコトに無線を使おうとした。
「先輩、ちょっと変ですよ……」
そう伝えようとした刹那。
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