序章 1

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セデ川の北の平地に2km四方に高さ4mの鉄柵が立ち、周囲からタウン・イ―サというコロニ―を守っている。鉄柵の内側には規則正しく木造の家屋が50軒立ち並び、人々は語らい、笑い、生きていた。 コロニーの住人たちは半自給自足の生活を送っている。 其々の家の傍らには畑があり、麦や野菜を栽培していた。 セデ川を水源としたパイプラインがコロニーの中を網の目のようにめぐり、作付けに使う水に困ることはなかった。 食用水は地下水をくみ上げている。ポンプや農耕用機械はコロニーの西に設置された、1km四方のソーラーパネルから供給される電力で賄われていた。 ヒサシは先輩のマコトと二人で、このコロニーのガードを務めている。 大きな鉄策で護られたコロニーにも、時折侵入者が現れる。二月ほど前は鉄策の傷んだ隙間から1mはあろうムカデが入り込んだことがあった。 コロニーの住人が共同で、家畜として飼っていた食用蜥蜴を3頭食べてしまい、守ろうとした男性が襲われた。 ヒサシが電動カートで駆け付け、ショットガンでムカデの頭を粉砕し、男性は助かったものの、丸々と太ってそろそろ食べごろだった蜥蜴を襲われたコロニー住人のショックは大きかった。 防壁の管理もヒサシ達の仕事の一部なので、蜥蜴の肉にありつけなかったのはお前たちの職務怠慢のせいだと散々非難された。 無理もない。この世界では動物性タンパク質は貴重品なのである。     
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