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「この間配給されたミートキューブ、昨日で全部食べちゃったの。次の配給まであと三日くらいあるでしょ?ちょっとお肉系食べたくなって。でも、柵の外にか弱い少女一人が出たら危ないから、ボディガードでついてきて欲しいなあと思って。キイだけでは心もとないでしょ?」
どうやら、頭の上のペットの爬虫類は「キイ」という名のようだ。
「俺の仕事は、このコロニーを護ることであって、我儘な娘の釣りを手伝う事じゃないんだよ」
「いたいけな美少女が、外で大きな虫に襲われたらかわいそうだと思うでしょ?」
「その美少女っていうのは、一体どこにいるんだ?俺の目には頭にペット爬虫類を乗せた美少女とは程遠いヤツしか見えないんだが」
ヒサシの嫌味な物言いに、ユリは頬をぷーっと膨らませた。
「バーカバーカ!ヒサシのバーカ!ケチー!」
「キー」
ユリの悪口に、キイも同調する。
「駄目なものは駄目だ」
「もー、ちょっとくらいいいじゃない、ねーったらー」
「五月蠅いぞ、ドブス」
ユリは決してブスの類ではなく、顔立ちは整っているほうだ。何より笑顔がかわいらしく、ヒサシはそのことを理解しているのだが、ユリを怯ませるための方言として言った。
「ドブスって、、、ドブスって酷いよぉ」
ユリの瞳はみるみる潤み、大粒の涙が頬を伝って転げ落ちた。
主の動揺に驚いたキイは、頭の上から肩を伝って腕の上に立ち、ユリの顔を覗き込んでいる。
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