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「あーあ、泣かしちゃったよ。ヒサシ、小一時間くらいだったらいいから、ユリの釣りに付き合ってやれ」
ガード小屋で椅子に座り、読書に浸っていたマコトがパタンと本を閉じ、堪らず助け船を出した。
「ユリちゃん、ごめんな。コイツは堅物だからさ言葉がうまく使えないんだよ。おれが暫く一人で仕事するから、一緒に釣りに行ってきな」
「えーっ?!」
と声を上げたのはユリではなくヒサシだった。
「ほら、文句言わずにさっさと行ってきな。だいたい、ユリに釣りを教えたのはお前だったじゃないか」
「まあ、それはそうですが、、、餌をとるのにも時間かかるし」
「餌なら取ってあるよ、ほら」
「こりゃ見事なミルワームだな」
「ユウナおばちゃんちの排水路の近くにたくさんいるよ」
ユリは四角い半透明のケースの中でうごめく十数匹のミルワームを、窓の外からヒサシとマコトに見せた。
「さあ、これで断る理由は無くなったな」
ヒサシは苦笑した。
「わかったわかった。ボディガードするよ。すりゃあいいんでしょ」
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