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クロージング
それは、想像を絶する力への畏怖。
『絶対』が約束されないはずの世界に、『絶対の未来』をもたらす者が居るとするならば。
ヒトは、その存在を『神』と呼ぶのだろう。
《‥‥リュージンズ、選手の交代をお知らせします》
プロ野球・名古屋リュージンズの本拠地、グラン・ドームにウグイス嬢のアナウンスが流れる。
それは、この試合を締めくくる儀式の場へ『神』を呼ぶための宣誓。
「おおっと! 回は9回表で、リュージンズの守り! 点差は僅かに1点かも知れないが、それでも『この男』には充分すぎるアドバンテージだ!」
テレビのアナウンサーも、誰が出てくるのかを何ひとつとて疑っていない。
《‥‥ピッチャー、工藤に代わりまして‥‥『天神』‥‥ピッチャー『天神』‥‥背番号99‥‥》
1塁側からは『神』を称える怒涛のような歓声と、ドン!ドン!と力強く鳴り響く太鼓の打音が湧き上がり、外野にはデカデカと『神様・仏様・天神様』の横断幕が掲げられている。
それは、三塁側の客席から聞こえてくる『諦めの悲鳴』と比べて何と対照的な光景であろう事か。
「‥‥解説の万燈さん、まぁ‥‥此処は予定通り、という事ですよね?」
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