ロッカールーム

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小声で、細木は下を向いたままだ。 「何‥‥?」 ロッカールームが静まり返る。 「天神さん‥‥『今年限り』って話っス。成績こそアレっスけど『身体がついてこないから』って‥‥今シーズン限りでユニホームを脱ぐそうです‥‥」 「‥‥っ!」 そこに居たチームの全員が息を呑む。 「まさか‥‥ホントかよ! フカシこいてんじゃねぇよなっ?!」 同期の工藤が詰め寄る。 「馬鹿野郎!こんな話、ウソついてどうすンだよ! くそ‥‥天神さんに胴上げ投手を味わせてあげたかったなぁ‥‥」 細木はそう言って嘆くが。 確かに、リュージンズはここ10年以上、優勝はおろかAクラス(※上位3チーム)にも入れていない。 今年もTVで解説をしていた万燈が指摘したとおり『最下位争い』という体たらくで、首位のトレバリーズからは10ゲーム以上離されている。 すでに自力優勝の芽はなく、この『差』をシーズン残りの2ヶ月弱で埋めるのは、全く不可能な状況と言える。 「そうだな‥‥前回の優勝から12年も遠ざかってるしな。その間、天神さんは此処10年で最優秀救援投手を実に7回だ。個人の成績としちゃぁ、充分過ぎるだろう。それで『優勝出来てない』ってのは辛いだろうよ‥‥。     
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