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「そうですか‥‥『やっと』上がって来るんですね。しかし‥‥前村さんは先発ですから、誰か先発がオチるんスよね?」
ボソっと口にしてから、工藤が少し慌てる。
「と、とりあえず! ボクは『下に行け』って言われてませんから!」
「‥‥うーん、『微妙』‥‥かな?」
長尾が意味ありげにそっぽを向く。
「止めてくださいよぉ~」
すると、
「おーい、工藤。こっちに来てくれ」
投手コーチが手招きをしている。何やら、深刻そうな表情に見えなくもない。
「うぐっ‥‥!」
工藤の顔色が青ざめる。
「‥‥何スか?」
コーチに近づいて、おずおずと尋ねると。
「うむ、言い難いんだが‥‥配置転換だ。知ってるかも知れんが前村が上がってくるんで、先発要員が一人余る事になる。本来なら現在のローテの誰かを二軍に落とす処なんだが、前村も9回を完投出来る投手じゃないからな‥‥クオリティを維持出来るのは、せいぜいが6回かそこらだろう。だとすると逆に中継ぎを充実させないといけない。
と、言う事で『ビハインド』の中継ぎ要員を1人、下に降ろしてな‥‥代わりに『お前』に後ろを頼みたい。ま、良く言えば『セットアッパー』だな」
「セットアッパー‥‥ってことは、ボクの出番は『8回』ですか?」
工藤は、自分の顔を指差した。
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