ロッカールーム

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「そうだ。球数を意識しなくて済むのなら、お前の決め球(スライダー)も相手に通用するだろうし。ただ、8回限定とは限らんかもしれん。場合によっちゃぁ、そのまま9回も投げるかもしれんから『そのつもり』をしといてくれ」 天神の代わりになる救援投手(クローザー)は居ない。 だから、点差が開いている場合や、同点の展開では温存しておきたいのだ。 「わ‥‥分かりました」 突然の申し渡しにビックリしながらも、工藤が頷く。 「前村さんが一軍公示されるのが多分、明日だからな‥‥お前も若いとは言え、昨日は100球以上投げてんだ。今日・明日はノースロー調整にして、出来るだけ肩を休めとけ。それに‥‥」 投手コーチの顔が、やや強張って見える。 「ヘタすると、此処から暫くは大車輪で活躍して貰わんといかんかも知れん」 「え‥‥それは‥‥どういう事ですか?」 「いや‥‥何と無く‥‥な。実はさっき、野手の打撃練習を見てたんだ。大抵、この時間の打撃練習なんてのはウォーミングアップ程度の軽いモンなんだがよ。‥‥今日に限って妙に雰囲気が『張って』んだよ。ピリピリしてるって言うか。何かさ、感じるんだよ。『これは来るな』って」 「『来る』‥‥ですか」 工藤には、いまいちピンと来ないようだ。 「12年前にウチが優勝した時にな‥‥丁度、こんな感じだったんだ」 そして。 その予感は、少しづつではあったが確実に『的中』しつつあった。
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