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「‥‥皆んな、これを見て欲しい。投手なら誰でも知っているだろうが、これは我がチームの『登板予定表』だ。これを張り出している目的は2つある。ひとつは『自分が投げる日』を、自覚してもらうためだ。そしてもうひとつ‥‥」
監督が、ぐるりと皆んなを見渡した。
「他ならぬ私自身がカッカ来て『後先考えずに』投手起用しないように自制するためなんだ。そうしないと選手を消耗させて、結局は後で大敗を喫することになるからな‥‥が、しかし!」
ビリビリビリ‥‥!
「あっ‥‥!」
選手の見ている前で、その『予定表』が破り捨てられる。
「今なら‥‥そう、今なら! この空気の中であれば、Aクラス入りは充分可能だろう! 確かに、2位のタイタンズや首位のトレバリーズとはゲーム差が離れているし、此処を追いつく事は無理かも知れん。
しかし、少なくとも3位に食い込めば『クライマックスシリーズ』に出場できる‥‥そうなれば短期決戦でリーグ代表として日本シリーズに出ることも可能だ!」
「‥‥っ!」
チームメイトの間に、緊張感が漂う。
「苦しい戦いになるのは間違いない‥‥だが私は、此処は千載一遇のチャンスと考える! 此処を逃せば、またいつもの年と同じようにズルズル後退して最下位に甘んじることになるだろう!だからっ!
‥‥もう、予定表を念頭に置くのは止めることにした。残りゲームは、その全てを総力戦で望む覚悟だ‥‥大変だが、私に付き合って欲しい!」
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