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ロッカールーム
― 天神がロッカールームを後にした後。
「‥‥天神さんって、本拠地で試合した後は飲みに行かないんですね?」
細木が、ふと呟いた。
「ああ、奥さんが駐車場まで迎えに来るからな‥‥。お前は知らないかも知れないが『マユミさん』と言って、凄い美人な奥さんだぞ? それに‥‥」
長尾が苦笑いを浮かべる。
「‥‥超・怖ぇぇんだよ。何しろ、あの天神さんと喧嘩で渡り合える唯一の人類だろうな」
「え‥‥マジっすか!」
工藤が驚いた声を上げた。
「あの天神さんと、喧嘩で渡り合うんスか!」
想像がつかない、といった表情を浮かべるが。
「ああそうだ。何しろ錦3丁目の高級クラブで現役の『ママ』をしている人だからな‥‥ショバ代でゴネてくるスジモン相手にも一歩も引かねぇて言う、豪腕だよ? まぁ、天神さんでなけりゃぁ相手は務まらんだろうな」
「ひぇぇぇ‥‥そりゃぁ、ウカツに浮気なんかしたらコロされますね‥‥きっと」
着替えの手を止めて感心する工藤の横で、細木は項垂れたままだった。
「ん?どうした、細木」
長尾が声をかける。
「‥‥オレ、うっかり聞いちまったんですよ‥‥監督と天神さんが内緒話してンのを」
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