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試合後
ガチャリと音を立てて、ロッカールームのドアが開く。
「‥‥。」
無言で入って来たのは、シャワーを終えた天神だった。
「あ!天神さん、お疲れっす!」
「お疲れでーす!」
先に着替えを済ませていたチームメイトが、口々に声を掛ける。
若手にとってみれば、プロ野球生活、実に18年目のシーズンで今年36歳となる天神は兄貴分というより『親』に近い感覚はあるかも知れない。
「ふう‥‥」
ロッカー前の椅子に、どっかりと座り込む。
「別に、疲れちゃぁいねぇさ。たった12球しか投げてねぇしよ。‥‥何なら、もっと『疲れる』位に登板を増やしてくれて良いんだぜ?」
「いやぁ、はは‥‥それを言われると辛いっスね」
若手の野手、細木が頭を掻く。
何しろ、今日の試合までは三連敗だったのだ。
天神の出番は勝ちパターンに限られるので、移動日を挟んで中4日の登板となる。
「‥‥実際、天神さんには申し訳ないと思ってますよ? 今日のブルペンもバタバタだったし。7回までは4点差だったのが、8回に‥‥」
捕手の長尾が、チラリと今日の先発・工藤の方を見やる。
「‥‥コイツがバタついて3点をとられてヒヤヒヤの1点差ですから」
「‥‥ぅっす。‥‥すんません」
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