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翌日。
期待に胸を膨らませて、私は学校から走って帰る。
挨拶もそこそこに祖母の家の居間に滑り込むと、果たしてそこに置かれていたのは、イモはイモでも、芋けんぴだった。
「ばあちゃん、これ違うよ。イモはイモでも、僕が言ったのはジャガイモの方だよ」
半分イラッとしていた私は、その場にあった新聞の折り込みチラシの裏側に、ポテトチップスのパッケージの絵を描いて見せた。
「そうかいそうかい。すまんかったねえ。
このイモの怪物の絵がついたお菓子を買ってくればいいのかい?」
その絵を見て、大事そうに前掛けのポケットに仕舞った祖母。
そして、その翌日から、期待通り、毎日ポテトチップスが卓袱台に置かれるようになった。
だが、一週間を過ぎたあたりから、私の頭の中に、不埒な考えが浮かび始める。
ポテチ、飽きた…な、と。
ただ、毎日わざわざ私のためにスーパーまでポテトチップスを買いに行ってくれている祖母の手前、飽きただなど、言えるはずもない。
ここは、テレパシーだ。
テレパシーしかない。
そういえばこの前テレビで超能力者が、念写とか、スプーン曲げとかの超能力を披露する番組をやっていた。
その超能力の中の一つに、念じる事で相手の頭にその念じた思いを届ける、“テレパシー”という超能力があったはずだ。
私は、テレビで覚えたばかりのテレパシーを送ってみることにした。
“チョコレートが食べたい”と。
そして、ポテトチップスの時のように、祖母がチョコレートを知らなかった時のことを考え、チョコレートそのもののイメージ画像と、私がそれを食べているイメージ画像も送り続けた。
「タカシ、おばあちゃんにご挨拶なさい」
夕方、仕事を終えて迎えにきた母がそう告げるのを合図に、私は毎日、眉間に皺を寄せて、祖母の額のあたりに念を送り続けた。
そう。それこそまるで、テレビで最近話題のユリゲラーのように。
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