ばあちゃん

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ばあちゃん

私が子供の頃だから、もう30年ほど前になる。 両親が共働きだったため、小学校低学年のうちは、学校帰りに近所に住む母方の祖母の家に寄って、母が迎えに来るのを待っていた。 祖母の家は通りの商店街で果物屋を営んでいて、祖父が亡くなった後は、祖母1人で店を切り盛りしている。 「おお、タカシ、いらっしゃい。 おやつも置いてあるから、手を洗ってらっしゃいな」 「やったーっ!」 玄関にランドセルを放り投げた私が、大急ぎで洗面所でちょろっと流した水で形だけ手を洗い、着ている服のお腹で手を拭きながら居間に向かって走る。 お腹が空いて背中とひっつきそうだ。 今日のおやつは…? だが、飛び込んだ居間の卓袱台には、今日もミカンやバナナが置かれていた。 「タカシ、バナナ好きだろ?たんとお食べ」 店番をする祖母が私の方を振り返りながら微笑みかける。 売り物の中から、美味しそうなやつを見繕い、いつも私に食べさせるために用意してくれているのだ。 「おばあちゃん。ありがとう。でももう毎日ミカンとバナナだと飽きたよ。お菓子ないの?ポテチとかさ!」 ついに私は禁断の一言を口にしてしまった。 祖母が毎日わざわざ私のために用意してくれているのにもかかわらず、だ。 毎日私が食べる分を余計に仕入れているのだから、痛い出費のはずなのに。 もちろん子供の自分の私には、そんな事は分からないのだが。 「ばあちゃん、ポテ…、なんだって? そんなの食べたことないよ。 それって、いったいなんだい?」 「ポテチはねぇ、イモだよイモ。イモを切って油で揚げたヤツだよ。 近くのスーパーに売ってあるからさ、明日は買ってきといてよ」 「ごめんよ、ばあちゃん、流行に疎くてさ。若い子の好きなもんとか、分かんないの。でもタカシは物知りだねえ。明日からちゃんと買っとくよ」
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