447人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
翌日、パスを作って貰いました…というメールが入る。
その日、留衣子は17時半過ぎには巽のお迎えに行っていた。
朝の時点で、今日が早く帰れる最後かも…。と聞いていた。
多分、今日も残業したかったのだと思うが、パスの事も考えて早く帰宅したのだろう。
「夕食、作っておきます。いらない人は早めにメールを。」
留衣子の夕方のメールはそう書いてあった。
「夕食の支度がないなら、ちょっとだけ残業していきます。19時には帰ります。」
と、由良は返信した。
次の日から、留衣子は本当に忙しくなり、朝は何とか巽を送って行くが、早く起きて仕事をしていたし、帰りも23時を過ぎる事もあった。
そんな状態が1ヶ月続き、由良も莉梨子も巽のお迎えと世話をしながらも、留衣子の身体を心配した。
「凄いね?広告代理店…。」
巽をお風呂に入れながら、由良のサポートをしていた莉梨子が呟いた。
「うん、でもどこでも繁忙期ってあるしね? りり、ガーゼ取って。」
「はい。 …でもさ、こんなに忙しいとたっくんとの時間ないよね?」
「それ、一番気にしているのはるるだからね?これからたっくんもいろいろあるだろうし、お金だって必要だし…。仕事はやめられない。タオルいい?」
「準備万端です。」
「じゃあ、たっくん、りりのとこに行こうねぇ。」
「ねぇらら?」
「ん?たっくん、拭いたら連れて行くよ?」
「ううん、そうじゃなくて。これってさ、看護師の勉強に役立ってない?」
「小児科ならこういうのもあるかもね?何でも経験だよ?」
「ふふふふっ……。」
巽をリビングに連れて行くと、後ろで莉梨子が不敵に笑う。
「何?気持ち悪いなぁ…。」
笑って作業を続ける。
「将来、自分の子の予行練習だね。ららの子が先かな~って。」
「ふむ…。その場合、相手は一路さんだけどいいの?」
「まだ付き合ってんの?」
「ひどっ!なんて事言うの?」
二人で笑って、巽を抱き上げた。
留衣子の仕事は1ヶ月経過して、大成功だと聞いた。
その1ヶ月後、社長賞は残念だったが、留衣子は昇級する予定で決まったと聞いた。
秋には「部長」だ。
留衣子のキャリアウーマンの実力が発揮されたひと月になった。
最初のコメントを投稿しよう!