12人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、学校の屋上に行くのが日課になっている。
七階建て校舎の屋上は立入禁止で、正当な立ち入りの理由を持ちそうなのは
エアコンの室外機を点検する人間くらいだ。
逆に言えば合鍵を作ってしまった者の占有空間で、僕以外には誰もいない。
僕にとってはすごく重要なこと。
今日も普段通り、野球部がグラウンド整備を終え帰宅する午後七時まで待つ。
それからのそりと動き始めて、屋上の錆びたドアを開けるのだ。
少し風が吹いている。突風でバランスを崩した時のことを考えると恐ろしい。
屋上は高さ一メートルくらいの塀に囲まれていて、
僕はその塀に震える手で掴まっている。
一メートルというのはすこぶる頼りない高さで、落下可能性は全く軽減しない。
本当はこの塀に腰掛けたりしたら、もっと怖いと思う。
何回か試みたけど、塀の上に片足をかけた辺りで耐えられなくなってしまう。
今日もやっぱり無理で、必死で口を開けて空気を取り込みながら、
薄汚れたコンクリートに滑り落ちるように戻った。
腰砕けになって、塗装の禿げかけた塀に頬を擦りつけて
――滑稽でみじめだということは分かっている。
でも怖くって、立ってなんかいられないのだ。
顔についたペンキの欠片を手で拭いながら、僕はようやく立ち上がった。
今日はもう帰ろうかなという気になっている。
大抵僕は一時間で満足するから、今は午後八時ぐらいだと思う。
どうでもいい分析。
「ん」
最初のコメントを投稿しよう!