一、神様が死んで腐ったやつ(春)

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放課後、学校の屋上に行くのが日課になっている。 七階建て校舎の屋上は立入禁止で、正当な立ち入りの理由を持ちそうなのは エアコンの室外機を点検する人間くらいだ。 逆に言えば合鍵を作ってしまった者の占有空間で、僕以外には誰もいない。 僕にとってはすごく重要なこと。 今日も普段通り、野球部がグラウンド整備を終え帰宅する午後七時まで待つ。 それからのそりと動き始めて、屋上の錆びたドアを開けるのだ。 少し風が吹いている。突風でバランスを崩した時のことを考えると恐ろしい。 屋上は高さ一メートルくらいの塀に囲まれていて、 僕はその塀に震える手で掴まっている。 一メートルというのはすこぶる頼りない高さで、落下可能性は全く軽減しない。 本当はこの塀に腰掛けたりしたら、もっと怖いと思う。 何回か試みたけど、塀の上に片足をかけた辺りで耐えられなくなってしまう。 今日もやっぱり無理で、必死で口を開けて空気を取り込みながら、 薄汚れたコンクリートに滑り落ちるように戻った。 腰砕けになって、塗装の禿げかけた塀に頬を擦りつけて ――滑稽でみじめだということは分かっている。 でも怖くって、立ってなんかいられないのだ。 顔についたペンキの欠片を手で拭いながら、僕はようやく立ち上がった。 今日はもう帰ろうかなという気になっている。 大抵僕は一時間で満足するから、今は午後八時ぐらいだと思う。 どうでもいい分析。 「ん」
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