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いつのまにこんな、危な、い場所に、来て、たんだろう。
「ひいっ」
恥ずかしいくらいの大声を出して、僕は塀に縋りついた。
「高いの苦手なんだよな、見てたぞ」
彼女は嬉しそうな声を出して、塀の上で僕を見下ろす。
仁王立ちがよく似合うなと思う女の子だ。
「なあ。どこの誰が決めたか、よく知らないんだが」
僕の振動する指が、丁寧に塀から?がされた。無駄に力が強い。
「目つぶししてきたやつには、目つぶししてもいいらしいぜ」
さっきと立場が逆転し、右腕を掴まれ、ひょいっと持ち上げられた。
そして微塵のためらいもなく、彼女は飛び降りる。正真正銘、屋上から。
体がやけに軽くなった気がした。ジェットコースターの頂上で感じるアレだ。
ジェットコースターなんて乗れたことないけど!
心臓が握り潰される。景色が流れるように迫ってくる。
「あ、あ、あ、あ」
掴まれていない左手が、懸命に何かを掴もうともがく。時間がやけに長い。
スローモーション?死ぬ前ってこういう感じ?
息ができない。息をしなきゃ死んじゃう。違う。息なんて関係なく、落ちて死ぬ。
パニック状態の僕を見ながら、彼女は満足げだった。
「ほら、殺す気かって言えよ」
死ぬ。落ちる。死ぬ?死にたくない。怖い。僕は死にたくないんだって!
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