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半分寝ぼけた様子でよろよろと立ち上がった咲真は乱れた髪を粗雑にかきあげる
「ど、どうしたも何も何故隣で寝てるんですかっ それにその格好…」
指摘しようと衣が剥がされた上半身に視線を送るが ほんのりと焼けた肌と程良く付いた筋肉に妙な色気を感じてしまい咄嗟に目を逸らす
ドクドクと自身の胸の心拍が速まったのが分かった
如何してこんなにも彼の事を意識してしまうのだろうか
咲真が店に来たのは昨日が初めてでお互いに面識すらなかったのだ。それでも浮かない顔をしているお客さんを蔑ろに出来ないのは坂月の性分で けれどそれ以前に彼に対して少なからず興味があったのかもしれない…
でなければ「一晩だけ泊めてほしい」などの急な要求を受け入れる筈などないのだから
しかしその興味が好意に発展する事など世間的にはきっと極稀で、異性愛者である坂月にとって同性相手にその様な感情を抱く事は有り得ないのだ
有り得ないのだけれど今まで女性に対して抱いてきた感情と重なる部分があるのは否定できない
けれど例えその感情が興味以上の物だとしてもその行き過ぎた思いには決して気付いてはいけないのだと自身に言い聞かせる。
自分の一方的な感情の所為でまだ若い彼の将来の妨げになってしまったら困る それに咲真にとっても普通に女性と結婚し子供を授かり幸せな家庭を築いた方がいいに決まっている
それは坂月もまた同じで、再婚相手を探すのだって今からでも遅くはない筈だ 寧ろ本人も少なからずそんな未来を望んでいたのだ
だから彼と何もなかった事が分かればきっと必要以上に彼を意識する事は無くなるに違いない
フッと息を吐いて平然を装った坂月は昨夜アイロンを掛けて皺を伸ばしておいたワイシャツとズボンを咲真に差し出し、床に落とされたままの寝巻きを拾い上げてその場から去ろうとそそくさと歩き出した。が その動きを遮る様に咲真の手が坂月の肩を掴んだ
「坂月さん。昨日、可愛いかったですよ」
「…え」
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