バレンタインの帰り道。

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 ルンルン気分で歩いていると、橋の柵に右膝をついて風に吹かれる水面を見る少女がいた。少女の髪は耳の少し上で二つにまとめた、所謂ツインテールだ。その二束に結われた髪は、ゆらゆらと無意識に揺れていた。まるで感情に揺れ動くねこのしっぽのように、自由気ままに。  その髪が揺れる様子を思わず足を止めて見入ったところ、びゅうっとひときわ鋭い風が体を包む。風によりマフラーに入れ込んでいた私のセミロングの髪が煽られ、視界が黒く染まる。  思わず目をつむりながら髪をかき分けて、慌てて目の前を見つめ直す。すると、先ほどまで水面を見ていた少女がこちらを向いていて、ぱちりと目があう。 「悠美、ちゃん?」  目があった少女は、去年同じクラスであった倉橋悠美ちゃんだった。  彼女を一言で表すなら、「美少女」。  入学式での入場の際には、「全学年が見惚れてしまい 、拍手が止んだ」といういう逸話を持つほどの美少女だ。中学生という子供から大人になりかけている私たち中学生の中で、既に完成されきった存在。私たちとは違う次元にいるような、別次元の美しさと可愛さを持った少女。それが倉橋悠美ちゃんなのだ。
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