0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
魔王の口から、滝のように血が溢れる。少年の捨て身の一撃は魔王に致命傷を与えた。
顔を覆っていた頭骨が床に落ち、魔王の素顔が露わになる。
それは、少年がずっと求めていたあの笑顔だった。
「え…?」
剣を握る手が緩む。魔王は剣とともに床に崩れ落ちた。
少年は魔王の元へ駆け寄る。
「どうして…どうして君がここにいるんだ?!」
魔王の身体を強く揺すり問いかける。魔王は小さくつぶやく。
「お返し…」
絶え絶えの息で魔王は続ける。
「あのとき…魔族の私を助けてくれたお返し。勇者になりたいと言っていた、君へのお返し…。」
魔王の目に涙が溜まる。
「大変だったんだぞ。強くなって、先代の魔王を倒すのは。」
魔王の目から涙がこぼれる。
「大変だったんだぞ…。ここにくる人間を倒しながら、君に倒される日を待つのは。」
魔王は少年の頬に手を伸ばす。
「でも、今日ようやく叶った。君は…魔王を倒した。これで…君は勇者だ。おめで……と…」
魔王は少年の頬に触れる前に、力尽きた。
魔王城に勝鬨とも慟哭ともとれる少年の声が響く。
こうして、勇者は誕生した。
最初のコメントを投稿しよう!