勇者の誕生

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 魔王の口から、滝のように血が溢れる。少年の捨て身の一撃は魔王に致命傷を与えた。  顔を覆っていた頭骨が床に落ち、魔王の素顔が露わになる。  それは、少年がずっと求めていたあの笑顔だった。 「え…?」 剣を握る手が緩む。魔王は剣とともに床に崩れ落ちた。  少年は魔王の元へ駆け寄る。 「どうして…どうして君がここにいるんだ?!」 魔王の身体を強く揺すり問いかける。魔王は小さくつぶやく。 「お返し…」 絶え絶えの息で魔王は続ける。 「あのとき…魔族の私を助けてくれたお返し。勇者になりたいと言っていた、君へのお返し…。」 魔王の目に涙が溜まる。 「大変だったんだぞ。強くなって、先代の魔王を倒すのは。」 魔王の目から涙がこぼれる。 「大変だったんだぞ…。ここにくる人間を倒しながら、君に倒される日を待つのは。」 魔王は少年の頬に手を伸ばす。 「でも、今日ようやく叶った。君は…魔王を倒した。これで…君は勇者だ。おめで……と…」 魔王は少年の頬に触れる前に、力尽きた。 魔王城に勝鬨(かちどき)とも慟哭(どうこく)ともとれる少年の声が響く。 こうして、勇者は誕生した。
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