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「ねえかすたーど ぺぱーって?」
「レベルが上がったってことよ」
袖を引っ張るラスク殿の頭を優しく撫でて、カスタード殿はそう答えました。
「なに?れべるって」
「おいおい、ラスクお前そんなことも知らねぇのかよ」
深いため息と共に、スポンジ殿が項垂れます。
「スポンジ、いいから。ラスクちゃん、レベルっていうのは役職での強さってこと」
「やくしょく?」
「そう、私のカスタードって名前は『クリーム』って役職の上位職(マスタークラス)。外から仕留めにかかる『クリーム』の役職は、ホイップからカスタードへとレベルが上がるの」
ラスク殿は分かっていなさそうな曖昧な返事をし、周りを見渡します。
「みんなもそーなの?」
「そうよ。例えば、そこのでっかいのはみんなを守って基盤をつくる『ベース』って役職、一応マスタークラスのスポンジよ。しっかり守ってくれるんだから」
「なんだよ急に」
スポンジ殿は、カスタード殿から褒められ慣れてないせいか恥ずかしそうに頬をかき始めました。
「ペパーは『ミント』のマスタークラス、薬草のスペシャリスト。回復で彼女の右に出るものはいないわ」
ペパー殿が恥ずかしそうに首を横に振ります。
「みんなますたーくらすだ。すごいね」
「でも、実際一番すげぇのはリーダーだよな」
「そうね。なんてったって、あの『チョコ』の役職でマスタークラスなんだもん」
自分の役職の話では、素直に喜ぶことはできません。
役職は自分で選ぶのではなく、王から授かってはじめてわかるのです。つまりは、ただの運なのです。
「ねぇかすたーど。ちょこってつよいの?」
「そりゃそうよ。なんたって『チョコ』の役職は全体の1%しかいないの。万能型でなんでも出来るんだから」
「『チョコ』がいればすべての中心がそいつになるもんな。まったく、盾役からすりゃ羨ましいもんだぜ」
ビールが瞬く間にスポンジ殿の喉を通っていきます。ガツンと響くジョッキと丸テーブルの衝突音は、酒場の喧騒に紛れてすぐに消えてしまいました。
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